サルコペニアとは、加齢や疾患により筋肉量が減少し、全身の筋力低下および身体機能の低下が生じる状態です。
筋肉量の減少は、歩行速度の低下や転倒のリスクの増加、日常生活での動作の低下、寝たきりのリスクの増加など、さまざまな悪影響を及ぼす可能性があります。
今回は、サルコペニアの原因と症状、診断基準や、運動機能の低下、健康障害を表すロコモやフレイルとの違いを解説します。
また、サルコペニアの予防・対策を始め、食事と運動で筋肉量を増やす方法をご紹介します。
サルコペニアの原因と症状、診断基準は?
(サルコペニアの原因)
サルコペニアの原因は、加齢や疾患など様々です。
①加齢
・・・加齢に伴い、筋肉量は自然に減少していきます。
これは、高齢者になると筋肉の合成速度が分解速度に追いつかなくなるためと考えられています。
②疾患
慢性疾患(心臓病、糖尿病、腎臓病など)や、内分泌疾患(甲状腺機能低下症など)、栄養失調など、さまざまな疾患がサルコペニアの原因となることがあります。
③低栄養
・・・食事の際にたんぱく質やエネルギーの摂取不足、吸収障害などによる低栄養も、サルコペニアの原因となります。
適切な栄養素やタンパク質を摂取しないことが、筋肉量の低下につながる可能性があります。
④運動不足
・・・運動不足や身体活動の減少も、筋肉量の減少を促進する要因です。
(サルコぺニアの症状)
サルコペニアの症状は、以下のとおりです。
①手足の筋肉が細くなる
・・・特に腕や脚の筋肉が減少することがよく見られます。
②転倒しやすくなる
・・・身体のバランスが崩しやすくなるので、転倒しやすくなってしまいます。
③日常生活動作の制限が出る
・・・・階段の昇り降り、立ち上がり、歩行速度の低下など日常生活の動作が困難になることがあります。
(診断基準)
診断基準は、一般的には筋肉量や筋力の測定によって行われます。
具体的には、身体の特定の部位の筋肉量を測る方法や、手持ちの力を測定する方法などが使われます。
ただし、診断の基準は専門家や組織によって異なる場合があります。
※当ブログでは、AWGS2019サルコペニア診断基準を参考にしています。
①筋力(握力)
・・・男性28kg未満、女性18kg未満
②身体機能
・・・6m歩行速度(1m/秒未満)又は5回椅子立ち上がりテスト(≧12秒)又はSPPB(≦9)
③骨格筋量
・DXA(男性<7.0kg/㎡、女性5.4kg/㎡)
・BIA(男性<7.0kg/㎡、女性5.7kg/㎡)
(結果)
前項の条件に当てはまるとサルコペニアの可能性が大きく、また次の結果だとサルコペニアまたは重度のサルコペニアと診断されるようです。
・・・低骨格筋量+底筋力又は低骨格筋量+低身体機能
②重度サルコペニア
・・・低骨格筋量+低筋力+低身体機能
サルコペニアの悪影響とは?ロコモやフレイルとの違いは?
(サルコペニアの悪影響)
サルコペニアになると、筋力や身体機能が低下するだけではなく、以下の疾患のリスクも高めると考えられています。
・不安、うつなどの精神症状の悪化
・骨粗鬆症
・糖尿病
・心血管疾患
・認知症
(ロコモやフレイルとの違いは?)
ロコモやフレイルは、サルコペニアと関連しますが、次のような特徴があります。
①ロコモ(ロコモシンドローム)
・・・サルコペニアは、筋肉の減少や筋力の低下によって、運動機能の低下を招きます。
ロコモは、サルコペニアの状態がさらに進行し、筋肉以外にも骨や関節、神経なども含めて身体全体の機能が低下している状態のことを言います。
②フレイル(フレイルティー)
・・・加齢により筋力や心身の活力が低下して虚弱になり、介護が必要になる前段階の状態のことを言います。
健康な状態と要介護状態との中間に位置します。
サルコペニアやロコモは、フレイルのリスクを高める要因となる可能性が大きいと言えるでしょう。
超高齢社会に備えたサルコペニア・フレイル対策―2025年を目前として― (MB Medical Rehabilitation(メディカルリハビリテーション)
サルコペニアの予防・対策!食事と運動で筋肉量を増やすには?
サルコペニアの予防や対策には、適切な食事と運動が重要です。
(食事)
①タンパク質摂取
・・・適切なタンパク質の摂取が重要です。
特に、タンパク質が豊富に含まれる食品(肉、魚、卵、大豆など)をバランスよく摂取することが重要です。
②ビタミンとカルシウム
・・・骨と筋肉の健康を保つために、ビタミンとカルシウムを摂取することも重要です。
これらは魚や卵、乳製品などの食品から摂取できます。
③バランスの取れた食事
・・・栄養バランスの取れた食事を心がけましょう。
野菜や果物、穀物など、健康的な食事を摂ることが重要です。
(運動)
①筋トレ
・・・筋肉を強化するために筋トレを行います。
重量をかけたトレーニングや、エラスティックバンドを使用した運動などが有効です。
・・・心臓や全身の健康を保つために有酸素運動も重要です。
ウォーキングやサイクリングなどの有酸素運動は体力維持に役立ちます。
有酸素運動は、週3〜5回、1回30分程度を目安に行いましょう。
③バランスや柔軟性のトレーニング
・・・ 転倒予防や身体の柔軟性を保つために、バランスをとる練習やストレッチなども重要です。
これらの要素を組み合わせることで、サルコペニアのリスクを減らし、筋肉量を増やすことができます。
医師や栄養士、専門家のアドバイスを受けながら、個々の状況に合ったプランを立てることが大切です。
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まとめ
サルコペニアは、高齢者の健康を脅かす重大な問題であり、放置したままだと日常生活の動作が困難になることがあります。
サルコペニアの予防や対策のため、栄養バランスのとれた食事と、適正な運動を心掛けましょう。