公共施設や商業施設、病院など建物の玄関部分に、スロープが付いているのを見たことがあると思います。
車椅子使用者が建物に入るときに使用するスロープですよね。
でも車椅子で通行するときには、上り下りの勾配が急な場合、介助する人がいるときはともかく、自力で進もうとした場合はとても危険です。
そのため、車椅子使用者がスロープを使用する勾配には、基準が設けられているのです。
今回はその勾配角度の基準と、勾配を計算してパーセントに表す方法をご紹介します。
車椅子スロープの勾配角度の基準は?
(バリアフリー法による基準)
公共交通機関や建築物等に付属する車椅子のスロープ勾配については、バリアフリー法による「建築物移動等円滑化誘導基準」で定められています。
また車椅子のスロープの他にも、出入り口の幅、廊下の幅、トイレの数、エレベーターの大きさ・出入口の幅などの基準があります。
今回はその中からスロープの勾配についての解説です。
車椅子使用者に対するスロープの勾配(角度)などの基準は次の通りです。
(屋内における基準)
①勾配は1/12を超えないこと
・・・1/12とは水平距離12mに対して、高さが1m上がる勾配です。
角度で表示すると約4.77°になります。
②幅(階段に代わるもの)は1.5m以上
・・・車椅子使用者以外も通行します。
③幅(階段に併設するもの)は1.2m以上
・・・階段もスロープも車椅子使用者以外も通行します。
④高さ0.75mを超えると0.75m以内ごとに踏幅が1.5m以上の踊場が必要
⑤高さが0.16mを超えるスロープがある場合は、両側に手すりが必要
⑥上記①~④の項目については、車椅子使用者の利用支障がないものとして国土交通大臣が定めるスロープには適用しません。
ただし、勾配が1/12を超えるスロープには手すりを両側に設けることが必要です。
(屋外における基準)
①勾配は1/15を超えないこと
・・・1/15とは水平距離15mに対して、高さが1m上がる勾配です。
角度で表示すると約3.82°になります。
②幅については、上記②~④と同じ
③高さが0.16mを超え、かつ勾配が1/20を超えるスロープがある場合は、両側に手すりが必要
車椅子を自力で漕げる勾配の理想は
(体力によって限界が異なる)
一般的に車椅子使用者は、自分で車椅子を漕ぐか、介助者に後ろから操作してもらいます。
そのため、自力で漕ぐときは本人の体力や漕ぐ力、障がいの程度によって上がり下がりの勾配の限界は変わります。
スロープを自力で漕いで通行するときは、体力がある人ではなく、ある程度体力の無い人でも通行できる勾配でなければなりません。
①理想はなるべく緩やかな勾配
・・・理想的なのは、なるべく緩やかな勾配のスロープを設けることですが、緩やかであるほどスペースが必要となるため、現実には難しい面もあります。
(勾配の限界値は?)
建築基準法や経験値などからそれぞれの勾配を考えてみましょう。
①陸橋などの階段:勾配1/2
・・・陸橋などでちょっときつい勾配としてはこの程度の場所はあります。当然車椅子の自力では通行できません。
②自転車を押して上がる階段:勾配1/4
・・・自転車を押して上がる勾配としては、この程度です。
③建築基準法で階段に代わるスロープ:勾配1/8以下
・・・車椅子を自力で通行するにはきついですね。
④バリアフリー法の屋内勾配基準:勾配1/12
・・・屋内での限られたスペースでの限界勾配。
⑤バリアフリー法の屋外の勾配基準:勾配1/15
・・・屋内よりはスペースが確保しやすいです。
これらのように現実には1/2~1/15の勾配のスロープがありますが、車椅子で実際に通行するには1/2~1/8ではとても難しいでしょう。
バリアフリー法の基準の1/12~1/15であれば、車椅子使用者の方も通行できますが、このなかでもより緩やかな「1/15を超えない勾配」の方が理想的な勾配と言えます。
この理想的な勾配のスロープとしては、病院内のスロープがあります。
勾配を計算してパーセントで表すと?
勾配を表すものとしては、1/15、5°などの他にパーセントで表すこともあります。
(計算の方法)
①1/15の勾配
・・・高さ1mに対して15mの水平距離がある勾配です。
②5°の勾配
・・・水平に対して5°の角度を持つ勾配です。
③10%の勾配
・・・勾配をパーセントで表すときは、水平距離100mに対して高さがいくら上がるかによります。例えば10%の勾配では、100mの水平距離で10m上がる勾配のことです。
1/12の勾配 1÷12×100=8.33パーセントになります。
1/15の勾配 1÷15×100=6.67 パーセントになります。
まとめ
スロープの勾配を表すには、「1/15」、「5°」、「5パーセント」などがありますが、1/15とか5パーセントのように「水平距離○○mに対して○m上がる勾配」として考えるほうがわかりやすいと思います。