車椅子利用者にとって、座位保持は日常生活において重要な能力です。
しかし、一部の利用者は座位保持が難しいという問題に直面することもあります。
その背後には、筋肉の役割と必要性が関与しているからです。
筋肉は、車椅子での姿勢制御やバランスを維持するために不可欠な要素なのです。
今回は、車椅子利用者が座位保持できない原因と、なぜ筋肉が座位保持に必要なのか、さらに座位保持を改善する筋トレ方法のポイントについてご紹介します。
座位保持の重要性を理解し、健康な筋肉を育てることで、車椅子利用者の生活の質を向上させましょう。
車椅子利用者が座位保持できない原因は筋肉不足?
(座位保持とは?)
背もたれ(車椅子に限らず、一般の椅子なども含みます)が無い状態で、座位(座っている状態)を10分間保持できるかの能力を言います。
(車椅子で座位保持ができない原因は?)
車椅子利用者が座位保持をできない主な原因は、以下のものがあります。
①筋力の不足
・・・座位保持には、背中や腹部、体幹の筋力が必要です。
筋力が不足している場合、車椅子利用者は自身の体を支えることが難しくなります。
②体重増加
・・・車椅子利用者は、体重が増加すると、座位保持が難しくなります。
これは、車椅子の重心が不安定になるためです。
③筋肉の不均衡
・・・筋肉のバランスが崩れている場合、特定の筋肉だけ力が入るとか、他の筋肉が弱くなることがあります。
この不均衡は、座位保持に影響を与える可能性があります。
④神経障害
・・・神経系の障害や損傷によって、筋肉の動きが制限されることがあります。
そのため、座位保持が困難になることがあります。
⑤骨密度の低下
・・・骨密度の低下は、車椅子利用者にとって座位保持の困難さを引き起こす原因となることがあります。
骨密度の低下は骨折リスクを高め、安定した座位を保つことを困難にします。
⑥老化
・・・老化によって同じ姿勢を保つことができないとか、すぐに寝てしまうことなどがあります。
⑦車椅子の形状が合わない
・・・車椅子の大きさが利用者の体格と不適合で、きちんと座ることができない場合があります。
これらの原因は、個人によって異なる場合があるので、正確な原因や解決策を見つけるためには、専門家との相談や適切な判断が必要です。
座位保持が難しい場合は、車椅子の調整や座位保持補助具の使用など、さまざまな方法で改善することができます。
筋肉の不足がもたらす車椅子での座位保持の困難さとは?
(車椅子利用者が筋肉不足の場合)
車椅子利用者が筋肉不足の場合、車椅子での座位保全が困難になる可能性があります。
具体的な困難さには、主に以下のものがあります。
①姿勢の崩れ
・・・背中や腹部の筋力が不足していると、車椅子での正しい姿勢を維持することが難しくなります。
筋肉の不足により、背中が丸まったり、体が前かがみになったりすることがあります。
②バランスの喪失
・・・適切な筋力がない場合、車椅子利用者はバランスを維持するのが難しくなります。
特に体幹の筋肉が弱いと、車椅子での安定した座位を保つことが困難になります。
③体の不安定感
・・・筋肉の不足により、体の安定感が低下します。
座位保持が困難な状態では、体が揺れたり、横にずれたりする可能性が高くなります。
これは、日常生活での活動や移動に支障をきたすことがあります。
④圧力性潰瘍のリスク
・・・座位保持の困難さは、圧力性潰瘍(褥瘡)のリスクを高めることがあります。
適切な座位保持ができないと、特定の部位に長時間圧力がかかり、皮膚や組織が損傷を受ける可能性があります。
これらの困難さは、筋肉の不足に起因しているので、適切な筋力トレーニングやリハビリテーションプログラムによって、筋肉を強化し座位保持能力を向上させることが重要です。
専門家の指導のもと、個々の状況に応じた適切な対策を講じることが大切です。
座位保持を改善する筋トレ方法と鍛え方は?
(筋トレ方法と鍛え方は?)
座位保持を改善するためには、特定の筋肉を重点的に鍛える筋力トレーニングが効果的です。
以下に、座位保持を改善するための一般的な筋トレ方法と鍛え方の例をいくつかご紹介します。
①背中の筋肉(背骨周辺の筋肉)
背筋を鍛えるために、背筋伸展やラットプルダウンなどの背中の筋肉を強化するエクササイズを取り入れます。
・背筋伸展・・・背中を伸ばして座った状態から、ゆっくりと上体を前方に傾け、背中の筋肉を伸ばす運動です。
・ラットプルダウン・・・ラットプルダウンマシンを利用し、上腕を引き下げる動作を行い、背中の筋肉を鍛えます。
これらの筋トレが難しい場合は、
・背中の伸身・・・座位の姿勢で、ゆっくりと背中をまっすぐに伸ばします。回数は3~5回です。
②腹部の筋肉(腹直筋や腹斜筋など)
腹筋運動を行なうことで、腹部の筋肉を強化することができます。
・腹筋クランチ・・・仰向けに寝て膝を曲げ、上半身を起こし、腹筋を収縮させる運動です。
・サイドプランク・・・横向きに寝て、肘とつま先を支点に体を持ち上げ、腹斜筋を鍛える運動です。
これらの筋トレが難しい場合は、
・腹筋運動・・・身体を起こすときは、腹筋を使ってゆっくりとした動作で起きます。
3~5回。
・ストレッチ・・・ゆっくりとした動作で、左右に腰を捻じるのを5回行います。
③座位姿勢をサポートする筋肉(体幹の筋肉)
プランクやバランスボールを使用した運動は、体幹の筋肉を鍛えるのに効果的です。
・プランク・・・肘とつま先を支点に体を水平に保ち、体幹の筋肉を収縮させる運動です。
・バランスボールによる座位トレーニング・・・バランスボールに座り、バランスを保つことで体幹の筋肉を鍛えます。
これらの筋トレが難しい場合は、
・四つん這い・・・四つん這いの状態で体のバランスをとります。30秒ほど行います。
まとめ
座位保持を改善するための筋トレは、車椅子利用者にとって健常者と同じように筋肉を鍛えることはできません。
また、障害の内容によっては、動作が難しい場合もあるので、無理をしないように筋トレをするようにしてください。