ガマの油は、油売りと呼ばれる行商人が、口上を駆使しながら売り歩いていたことでも知られています。
その口上は、江戸時代の庶民の生活や文化を反映した、見事な芸術作品となっています。
また、ガマの油は、落語の演目としても有名です。
落語『蝦蟇の油』では、油売りが、ガマの油の効能を誇張した口上で、客を騙して油を売りつけようとする様子が描かれています。
今回は、ガマの油の向上と効能、ガマの油の落語のあらすじ、ガマの油は本当に効くのかなどについて検証します。
ガマの油に興味のある方は、ぜひご覧ください。
ガマの油とは?油売りが語る口上と効能とは?
(ガマの油とは?)
ガマの油は、日本の伝統的な娯楽として知られるもので、油売りが市場や祭りなどで披露する口上芸や落語の中で使用される架空の油です。
実際の油ではなく、その存在は笑いや教訓を伝えるために使われます。
(ガマの油売りが語る口上と効能とは?)
「さあさあ、お立ちあい」から始まる、ガマの油売りの実際の口上は、演者の個性やアドリブなどで、様々にアレンジされています。
そのなかでも、大道芸などで披露されているのは、大体次のような内容です。
大きく分けて、製造方法や効果を説明する部分と、ガマの油の効能を誇張した部分、刀を使った効能の実践の3つになります。
全文は、3500文字以上になってしまうので、本ブログでは要点をまとめて解説しますのでご了承ください。
なお、全文については、「筑波山ガマ口上保存会」の「筑波山ガマの油売り口上文」を見てください。面白いですよ。
①製造方法や効果を説明する部分
ここに取りいだしたるがガマの油だ。
ガマはガマでも四六のガマで、前足の指が4本、後ろ足の指が6本ある。
この四六のガマが住んでいるのが筑波山の山中で、大葉子(おんばこ)という露草・薬草を食らって育ちます。
この山中で、四面が鏡で下が金網・鉄板を敷いた箱の中に、四六のガマを追い込みます。
追い込まれたガマは、鏡に写る自分の醜い姿が、四方の鏡に写るからたまらない。
鏡に写る醜さにびっくり仰天した体から、脂汗をタラーリ、タラーリ流しまする。
その流した油を21日間柳の小枝で煮炊きして、赤辰砂、椰子油、テレメンテーナ・マンテーカという妙薬を合わせて、練って練りぬいて作ったのがガマの油の膏薬でござります。
②効能を誇張した部分
ガマの油の膏薬何に効くかと言うなれば。
まずは疾に癌瘡、火傷、梅毒、霜焼け、インキンタムシ。
後ろに回ると肛門の病、出痔、疣痔、走り痔、切れ痔、脱肛に鶏冠痔。
だが、このガマの油をグッとお尻の穴に塗り込むと、3分間経ってピタリと治る。
まだある。槍傷、刀傷、鉄砲傷、擦り傷、掠り傷、外傷一切。
虫歯の痛みには、紙に塗ったガマの油を上から貼ると、皮膚と肉を通して歯茎に滲みでる。
虫歯の穴にガマの油をポコンと入れると、痛みがピタリと治る。
赤ん坊の汗疹、爛れ、気触れなんかは、ガマの油を入れていた空き箱、潰れ箱、この箱を見せるだけでもピタリと治る。
ただし、効かないのが4つある。
恋の病と浮気の虫、禿と白髪には効かねえよ。
③刀を使った効能
しかし、もう一つ大事な物が残っておりまする。
取り出したるは、当家に伝わる家宝で正宗が暇に飽かして鍛えた名刀で、元が切れない中切れない、中が切れても先きれないなんていう鈍刀・鈍物とは物が違う、よく切れる。
種も仕掛けも無い一枚の紙を切ってご覧に入れる。
一枚が二枚、二枚は四枚、四枚は八枚、八枚は十六枚・・・パーと散らすと花吹雪。
この刀の差表・差裏にガマの油を塗ると、なんと刃物の切味がピタリと止まり、我が腕を切ろうとしても、打って切れない、叩いても切れない、押しても引いても切れない。
ところが、ガマの油でこの刀を拭き取るならば、刃物の切味が元に戻って触っただけで赤い血が出てござりまする。
はいこの通り、赤い血がでてきました。
だがお立合い!血が出てもガマの油をこの傷口へグッと塗ると、タバコ一服吸わぬまにピタリと止まる。これこの通り。
さてお立合い!
お立合いの中には、そんな効き目の有るガマの油、一つ欲しいけれど、さぞかし高いと思って
いる方もおりますけれど。
このガマの油、本来は一貝が200文、200文でありますけれど、今日ははるばると出張ってのお披露目。
男度胸で女は愛嬌、坊さんお経で、山じゃ鶯ホウホケキョウ、筑波山の天辺から真っ逆さまにドカンと飛び降りたと思って、その半額の100文、200文が100文だよ。
さあ、安いと思ったら買ってきな、効能がわかったらどんどん買ったり買ったり。
これらの口上は、江戸時代の庶民の生活や文化を反映した、見事な芸術作品となっています。その口上には、江戸時代の人々のユーモアや、商売人の心得などが込められています。
ガマの油売りの口上は、現在でも、筑波山周辺を中心に、大道芸として披露されています。
また、落語の演目「蝦蟇の油」でも、ガマの油売りの口上が披露されています。
ガマの油の落語のあらすじは?
ガマの油を題材にした落語には複数のバージョンが存在しますが、代表的なものの一つに「ガマの油売り」があります。
(あらすじ)
物語は、香具師と呼ばれる芸人がガマの油の口上を軽妙に語り、それによって大儲けする様子から始まります。
彼は気分良く酒を飲み、その結果酔っ払ってしまいます。
しかし、彼は帰る途中で人がいるところで再び口上を披露しようとします。
しかし、酔っているために呂律が回らず、話す内容は支離滅裂になってしまいます。
物語のクライマックスでは、香具師が自身の腕を切るトリックを使ってガマの油で血止めをする場面が描かれます。
しかし、彼が本当に腕を切ってしまい、ガマの油を使っても血が止まらないという予想外の展開が待ち受けています。
そして、彼の慌てた言葉として「トホホお立ち会い」「何だ?」「お立ち会いの中に血止めはないか」というオチで物語は終わります。
この落語は、笑いを提供しながらも意外性やトリックを巧みに織り交ぜたストーリーテリングが特徴です。
酔っ払いの香具師が巻き起こす騒動や、血止めの失敗による笑いが、聴衆を楽しませます。
ガマの油は本当に効くのか?成分・効能を検証すると?
ガマの油の由来は、戦国時代に筑波山の中禅寺の住職光誉上人の陣中薬の効果が評判になったもので、ガマとはガマガエルのことを言うようです。
また、ガマの油の成分には諸説あり、光誉上人の顔がガマに似ていたとか、植物のがまの花粉を煮詰めたものや馬油、ガマガエルから分泌される蟾酥(せんそ)でないかというものです。
蟾酥であれば、強心作用や鎮痛作用、止血作用があると言われますが、毒性も含まれているので戦後に規制され、日本薬局方では毒薬とされています。
現在では、筑波山地元のお土産品として軟膏や油を売りだすときに、「ガマの油」という名称だけを使用しています。
これらの商品は、鎮痛、消炎や皮膚の保湿保護、潤滑剤として多用されています。
まとめ
ガマの油の効能は、科学的に証明されているわけではありません。
ガマの油は、現在でも、筑波山周辺を中心に、大道芸としてガマの油売りの口上が行われています。
また、ガマの油を販売する業者も存在しています。