姻族関係とは、配偶者の両親、兄弟姉妹、祖父母など、配偶者と血縁関係(3親等内)にある人々との親族関係のことを言います。
結婚することで、配偶者の父母や兄弟などと、血のつながりが無くても、親戚関係になるのです。
民法では、血のつながりがある直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がありますが、姻族は義理の関係なので原則扶養義務はありません。
しかし、特別の事情があるときは、家庭裁判所の審判により、姻族でも扶養義務が課せられることがあり得るのです。
他にも、配偶者が亡くなった後まで、姻族と付き合いはしたくないと考える方もいるでしょう。
そのように姻関係を終了したい方は、「姻族関係終了届」を市町村役場に提出する必要があります。
今回は、姻族関係終了届とは?提出方法、必要書類、メリット・デメリット、遺族年金・相続・子供・お墓・苗字はどうなるかについて解説します。
姻族関係終了届とは?提出方法と必要な書類や手順は?
配偶者と離婚した場合には、姻族関係は終了しますが、配偶者が亡くなった場合には、自動的に姻族関係は終了しません。
(姻族関係終了届とは?)
「姻族関係終了届」とは、配偶者が亡くなった場合に、結婚によって発生した姻族関係を正式に終了させるための届出書類です。
姻族関係を終了するかどうかは、本人の自由意思で決めることができるので、配偶者の姻族の承諾は一切不要です。
以下では、姻族関係終了届の提出方法と必要な書類や手順について詳しく説明します。
(提出方法と必要な書類)
①届出書の入手
・・・姻族関係終了届は、通常、役所や市区町村の窓口で入手できます。
また、オンラインでダウンロードできる場合もあります。
届出書は公的な書式が定められていることが多いので、正しいフォーマットを使用することが大切です。
②届出書の記入(例:大阪市の場合)
・・・届出書には様式に従い、
・姻族関係を終了させる人の氏名・住所、本籍
・死亡した配偶者(氏名・死亡日・本籍・筆頭者の氏名)
・届出人署名(押印は任意)
③必要な証明書類
・・・届出書のほか、戸籍全部事項証明書1通(本籍地に届け出る場合は不要)、印鑑(認印:押印は任意の場合があります)
(提出手順)
①届出書記入
・・・届出書を記入します。必要な証明書類を用意します。
②届出書と必要書類を市区町村役場の窓口に提出
・・・提出方法について事前に調査しておくことをお勧めします。
届出人は本人(故人の配偶者)、本人確認書類(運転免許証など)が必要です。
③提出時期は、配偶者の死亡届の受理後いつでもよい
④費用・・・無料
届出書の様式や提出内容などの詳細は、各市町村の公式サイトや窓口担当などに確認することをおすすめします。
姻族関係終了届を提出するメリット・デメリットは?
(メリット)
①法的な解除
・・・法的に婚姻関係が解除されます。
これにより、亡くなった配偶者の親兄弟などの扶養義務がまったくなくなるので、親の介護や世話から解放されます。
②財産分与
・・・共有財産の分与や、財産権の問題が処理されます。
遺族年金や配偶者からの遺産相続は、そのまま受け取ることができ、財産の正当な分割が行われ、不正な要求から保護されます。
③相続権の確保
・・・相続権が再評価されます。
これにより、将来的な相続に関する問題が明確化され、適切に対処できるようになります。
④配偶者一族のお墓に入らなくてよい
・・・入りたくないお墓に入らないで済みます。
⑤姻族関係終了を証明できる
・・・書類として戸籍に掲載されるので、対外的に証明できます。
⑥姻族のトラブルとは無関係
・・・姻族の金銭トラブルなどに無関係でいられます。
⑦新たな出発
・・・姻族とは無関係で、自分の家族だけで新たな人生の章を始める一歩となります。
心の整理がつき、新たな関係やチャンスに向かって前進することができます。
(デメリット)
①姻族が近くにいると気まずい
・・・姻族が近所の場合、顔を合わせた時に気まずいことがあるかもしれません。
②経済的援助が受けられない
・・・生活が困窮しても、経済的援助が受けられません。
③子供への影響:
・・・基本的に姻族関係が無くなるので、姻族と子供が合いにくい環境になり、子供の生活に変化をもたらす可能性があります。
④姻族との関係が悪くなることがある
・・・同居している場合は、家を出ていくことになります。
また、薄情者と言われたり、法事などでトラブルになる可能性もあります。
遺族年金、相続、子供、お墓、名字はどうなる?
姻族関係終了届を提出した場合、遺族年金、相続、子供、お墓、名字について、それぞれ異なる影響がある可能性があります。
(遺族年金)
姻族関係終了届を提出しても、遺族年金の受給資格には影響がありません。
遺族年金は、被相続人の配偶者や子、父母が受給することができます。
姻族関係終了届を提出しても、これらの親族関係は変わらないため、遺族年金を受給することができます。
(相続)
姻族関係終了届を提出しても、相続権は影響を受けません。
相続権は法律に基づいて決定され、姻族関係終了に関係なく、配偶者や子供などの相続人が遺産を受け継ぐ権利を持っています。
(子供)
姻族関係終了届を提出しても、子供の親子関係には影響がありません。
子供の親子関係は、戸籍上は被相続人と生存配偶者の間にあります。
姻族関係終了届を提出しても、戸籍上の親子関係は変わらないため、子供の相続権もそのままです。
(お墓)
婚姻関係終了届を提出すると、お墓の管理者との関係も断ち切られるため、配偶者と同じ墓に埋葬してもらえる可能性はほとんどありません。
生存配偶者の実家のお墓に埋葬してもらうか、もしくは自分でお墓を用意する必要があります。
(名字)
姻族関係終了届を提出しても、名字は変更されません。
名字は、婚姻前の姓に戻したい場合は、復氏届を提出する必要があります。
まとめ
姻族関係を終了するかどうかは、個々の状況によるので、他人と比較することはできません。
メリット・デメリットをしっかり理解して、自分のこと、子供のこと、今後の経済的なことを十分考慮して、後悔しないように決定しましょう。