家の中で車椅子生活をしなければならなくなったときや、将来のことを考えてバリアフリーの家を考える方は多いと思います。
今までの家を車椅子を使用できるようにリフォームするとか、新築の家をバリアフリーにする場合、車椅子対応に基づいた設計・施工の検討をしなければなりません。
バリアフリー対応では、車椅子が通る幅や回転スペースなどの基本的な寸法の基準値があり、それに基づいて建築計画を立てます。
これは家の中を車椅子利用者が、自分だけまたは介助者とともに生活する上で、壁にぶつかることや、回転しずらい、曲がれないなどの支障がないようにするためです。
そのため、実際に住む人や車椅子を使用する人も、一緒に建築計画に参加して住みやすい環境づくりを目指すことが重要です。
今回は、車椅子を使用するバリアフリーの住宅について、基本的な幅やスペースなどの寸法の考え方をご紹介します。
車椅子の寸法と通過する廊下の内法寸法の考え方は?
車椅子での移動は、バリアフリー化が進んでいる現代でも、まだ十分な配慮がされていない場合があります。
車椅子がスムーズに通れる廊下幅を考えるには、車椅子の寸法に加えて、車椅子利用者が操作するのに必要なスペースなどを考慮する必要があります。
(車椅子の大きさは?)
①手動と電動の違い
・・・一般的な車椅子の幅は、介護用や手動車椅子は63㎝以下、電動車椅子は70㎝以下と
JIS規格で決まっています。
家の中で車椅子を使用する場合、この寸法を基準としてバリアフリー対応の設計をします。
(バリアフリーは、内法が有効幅?)
①内法とは?
・・・バリアフリーでは、廊下幅については内法(うちのり:建具枠の内側から内側を測った寸法)を有効幅として考えます。
内法は車椅子幅が63㎝の場合、直進するだけであれば、63㎝+両サイド10㎝の余裕=83㎝となります。
(内法の考え方は?)
車椅子で廊下を直線で通過する場合、内法の基本的な考え方は、次のとおりです。
①90㎝以上
・・・日本のバリアフリー基準では、廊下の最低有効幅は90cm以上とされています。
これは、標準的な車椅子が通過できる最小限の幅です。
②120㎝以上
・・・歩行者が横になり、車椅子とすれ違えると考える幅。
③180㎝以上
・・・車椅子同士がすれ違える最低限の幅。
これらから、車椅子で廊下を通行する場合、90㎝以上の幅が必要であることがわかります。
ただし、車椅子の種類やサイズによっては、幅が必要以上に広くなる場合もあります。
また、車椅子での通行以外にも、バリアフリー対策として、段差の解消や手すりの設置なども重要です。
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車椅子で廊下を曲がる場合の幅は?
(車椅子、曲がり角のスペースはどのくらい?)
手動式車椅子は幅63㎝、長さが約105㎝あります。結構大きいのです。
廊下を直進だけでなく、直角に曲がる場合はカーブを描いて曲がるので、直進する廊下よりは方向転回のためのスペースが必要になります。
それに加え、車椅子を使用する人が快適に通行できるよう、車椅子の幅や長さだけでなく、周りの空間も考慮する必要があります。
壁にぶつからないように曲がるスペースですね。
①幅90㎝以上、直線部140㎝
・・・手動車椅子の場合で、曲り角を頂点として、曲がる前・曲がった後に140㎝の直線部分が必要です。
この直線部分によって、車椅子を回転させるスペースや、安定した速度で通過するためのスペースが確保されます。
②幅120㎝以上
・・・廊下幅が120㎝あると、手動・電動車椅子両方とも曲がることができます。
しかし、車椅子を使用する人が快適に通行できるためには、周りの空間や道幅も考慮する必要があります。
直角に曲がる場合は、直線部を140㎝にするか、幅を120㎝以上にするかになると思います。
また、車椅子を使用する人の身体的特徴や、車椅子を使用する人が多い場合は、より大きなスペースが必要になる場合があります。
そのため、車椅子の通行を考慮する際には、車椅子を使用する人の視点やニーズを重視し、より広いスペースを確保することが望ましいでしょう。
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車椅子で方向回転をする場合の必要スペースは?
(車椅子で方向展開するスペースは?)
車椅子を使う人たちにとって、直進や曲がり方以外にも、方向転換をすることがあります。
そのためには、以下のスペースが必要です。
①140㎝以上×140㎝以上
・・・車椅子が180度の方向転回ができるスペースです。
②150㎝以上×150㎝以上
・・・手動車椅子が360度方向転回できます。
③180㎝以上×180㎝以上
・・・電動椅子も360度方向転回ができます。
車椅子を使う人たちにとって、車椅子で生活する上での最低限の必要スペースは非常に重要な問題です。
そのため、家づくりをする際には、車椅子での生活を考慮した計画が必要です。
車椅子を使う人たちだけでなく、高齢者など、身体に不自由な人たちが家にいる場合にも、バリアフリーな環境が必要です。
自分たちが元気なうちから、バリアフリーの家づくりを計画することを検討しましょう。
(その他の考慮点)
①壁の形状と位置
・・・壁が直角に接している場合や、斜めになっている場合では必要な幅が変わるため、現場の状況に合わせた調整が必要です。
②手すりの設置
・・・手すりの厚みや位置も考慮して、実際の有効幅を確保する必要があります。
③床の材質と滑りやすさ
・・・床材によって車椅子の操作性が変わるため、滑りにくく操作しやすい床材を選ぶことが重要です。
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まとめ
今回の数値は、バリアフリーな家づくりにおいて最低限必要なスペースです。
できるだけ広いスペースで、車椅子生活にストレスがかからないような環境を作ることが望ましいです。